Word のヒント:数式入力
編集 逆瀬川浩孝

Wordには数式を表示させるための特別な道具が用意されていて、それを使うと、市販のテキストのようなきれいな数式を作り出すことが出来ます。慣れるまでは、結構煩わしく、手で書いた方がよっぽど早いのですが、卒業論文では、数式も含めてすべてワープロで作成されることが必須ですので、今から少しずつでも慣れておいた方が良いでしょう。

パワーポイントでも同じ数式エディタが使えます。最初のエディタを表示させる方法が違うだけで、エディタでの入力法は同じです。

基本操作

数式エディタ)「挿入」タブ「記号と特殊文字」グループの「数式」ボタンをクリックする(あるいは「Alt」+「Shift」+「=」キーを押す、という簡易ショートカットキーでもよい)。そうすると「ここに数式を入力します」という文字列が表示された数式エディタが表示されると同時に、リボンに数式エディタ用の「デザイン」タブが追加され、表示される。

インライン、数式モード)行の先頭で数式エディタを立ち上げると、中央揃えでエディタが表示されるので、独立した数式を入力することができる(数式モードという)。文章を入力している途中で数式エディタを立ち上げると、入力された数式が本文中に挿入される(インラインモードという)。記号の説明や、簡単な数式入力の場合に使う。分数式や和の記号が、独立した数式の場合に比べて小さく表示される。
パワーポイントの場合、独立した式を書く場合は、スライドの周辺をクリックして、カーソルが点滅していないことを確かめてから「挿入」→「記号と特殊文字」→「数式」ボタンをクリックする。ショートカットキーはない。フォントを大きくしたい場合は「ホーム」タブの「フォント」グループを利用する。

イタリック変換)数式を入力する場合は半角モードにすること。パワーポイントは自動的にイタリックフォントになるが、ワードの場合は毎回、Ctrlキーを押しながら「i」を入力して、イタリックモードに切り替える必要がある。イタリックモードになっているかどうかを確かめるには、試しに「a」と入力して、普通の「a」ではなく、「α」のような筆記体が表示されれば合格。もし「a」のように普通の文字が表示されている場合は、慌てずにCtrlキー+「i」を入力する。そうすると、筆記体になるはず。数式を入力する場合は常にこの斜体(筆記体)モードで入力する。

簡易入力)下付き文字、上付き文字、分数や簡単な数学記号は、マウスを使わずに、キーボードだけで入力ができる。

テンプレート利用)ちょっと複雑な数式を入力する場合は、「デザイン」タブの「構造」グループ、「文字と特殊記号」グループの様々な小道具を使って必要な数式を入力する。

テンプレート、記号パレット利用

数式テンプレート)「数式エディタ/デザイン」タブの「構造」グループにあるボタンをクリックすると、数式入力用のテンプレートが表示されるので、適当なテンプレートをクリックして画面に表示させる。点線で表示される枠をクリックして(あるいは矢印キーを操作して)アクティブにしてキーボードから文字を入力する。

文字記号パレット)同じく、「文字と特殊記号」グループに文字や記号のパレットがあるので、必要な文字、あるいは記号をクリックすると、現在のカーソル位置に挿入される。「文字と特殊記号」グループの初期画面は「±、∞、。。。」などの記号(基本数式)が並んでいるが、右下の▼をクリックすると、左上に「基本数式」の文字が表示され、その横に▼アイコンが表示される。それをクリックすると、「ギリシャ文字」「演算子」などのメニューが表示されるので、必要な記号パレットを選択すればよい。

行列の入力)4次以上の行列を入力する場合、テンプレートには 3 x 3 までしか書かれていないので、行、列を追加する必要がある。例えば 4 x 4 の行列のテンプレートを作るには、次のようにする。

  1. 3 x 3 のテンプレートを表示させ、適当な枠をクリックしてアクティブにし、
  2. マウスを右クリックし、プルダウンメニューから「数式オプション/後に行を挿入」メニューを選択する(アクティブセルの下に新しい行が挿入される)
  3. 同じように、マウスを右クリックし、プルダウンメニューから「数式オプション/後に列を挿入」メニューを選択する(アクティブセルの下に新しい列が挿入される)

マウスを使わない数式入力のヒント

テンプレートを探せば必要なものは揃っているが、下付き文字や上付き文字の入力のように頻繁に使うものは、一々マウスで「構造」グループのテンプレートを選択するのは面倒。最初に説明したように、制御記号とスペースバーを組み合わせて入力する簡易入力法(linear format という)を知っておくと効率がよい。

下付き文字、上付き文字、分数、「\ne」「\ge」などの他に、普段よく使われる記法をまとめておく。

和は「\sum」、積分は「\int」、平方根は「\sqrt」とする。使い方は、一々説明しなくても、使用例を見て納得してもらう方が手っ取り早い。例えば、次のように入力する。(□はスペースバーを表す)。

数学記号の入力

\sqrt \int Σ \sum
\le ± \pm \infty
\cap

\subset
\ge \equiv \Rightarrow
\cup

\supset
\ne \ll \Leftrightarrow
\in

\sim
\approx \gg \therefore
\ni

\propto

ギリシャ文字

α \alpha β \beta χ \chi δ \delta ε \epsilon, \var...
η \eta γ \gamma ι \iota κ \kappa, \var... λ \lambda
μ \mu ν \nu ω \omega φ \phi, \var... π \pi, \var...
ψ \psi ρ \rho, \var... σ \sigma, \var... τ \tau θ \theta, \var...
υ \upsilon ε \varepsilon ξ \xi ζ \zeta

Δ
\Delta
Γ
\Gamma
Λ
\Lambda
Ω
\Omega
Φ
\Phi
Π
\Pi
Σ
\Sigma
Θ
\Omega
Υ
\Upsilon
Ξ
\Xi

式番号を付ける

数式モードの場合、同じ行にテキストを入れることはできないので、式番号を添付するには特別な工夫が必要になる。ここでは作表機能とクィックパーツ機能を使った方法を説明する。手順は以下の通り

  1. (表の挿入)「挿入」→「表」を選択し、表示される表から1行2列を選ぶ。
  2. (1列目に数式を入力し、2列目に式番号を入力するので)真ん中の区切りをドラッグしてなるべく1列目を拡げる。
  3. 1列目をクリックして、数式を入力する(AltキーとShiftキーを押しながら「=」キーを押し表示されたミニウィンドウに,数式を入力する)。
  4. 1列目をクリックして左揃えにする(中央揃えの場合は,スキップ)。
  5. (左揃えの場合、数式の表示位置を少し右にずらすため)ルーラーの左インデントをドラッグして、3文字分右に移動。
  6. 2列目をクリックして式番号を入力し((1)のように括弧付き)、「レイアウト」→「配置」→「中央揃え」を選ぶ。
  7. 表を選んで、「ホーム」→「段落」→「罫線」ボタンから「罫線なし」を選ぶ。

これで完成。
別の数式を入力する場合は、完成形をコピーペーストして、数式入力用のミニウィンドウの中身と、式番号だけ変えれば良い。

式番号が1ずつ自動的に増えていくようにしたい場合

「クィックパーツ」の「フィールド」機能を使う。手順は以下の通り

  1. 上の手順で作った2列目に入力した式番号を消去し、2列目にカーソルを置いて、「挿入」→「テキスト」→「クィックパーツ」→「フィールド」オプションを選ぶ。
  2. 表示される「フィールド」ウィンドウで、「分類」欄から「番号」、「フィールドの名前」欄から「ListNum」を選んで「OK」ボタンをクリックする。
  3. 表示される片括弧付き数字「1)」の前に「(」を追加する(章の番号を付けて「(3.」のようにしても良い)。
  4. 次の数式を入力する場合は、手順3で完成した数式行をコピーペーストすると式番号が1増えて表示されるので、数式を書き換えれば良い。
  5. あるいは、完成した数式を「クィックパーツギャラリー」に登録しておくと、コピーペーストではなく、クィックパーツのテンプレートを挿入する、という手順で式番号付きの数式を入力することができる。
    1. (登録)上で作った式番号付きの数式の数式部分を、「=」だけにしてから,式番号を含む全体を選択して、「挿入」→「テキスト」→「クィックパーツ」→「選択範囲をクィックパーツギャラリーに保存」メニューを選ぶ。
    2. (呼び出し)数式を挿入したい場所に空行を挿入し、その行の先頭で「挿入」→「テキスト」→「クィックパーツ」メニューを選ぶと、今登録した数式が表示されるので、それを選択する
    これで、式番号が最後の数式に付けられた番号に1足されたものが表示された「=」だけの行が作成される。

ここにワードの見本があるので参照のこと

数式3.0

以前のバージョンで用いられていた数式エディタの「数式3.0」でも同様な数式を作ることができる。

いろいろ組み合わせて所望の数式を入力する。入力し終わったら、数式エディタの外部をクリックすると確定する。修正したい場合は数式をダブルクリックすると、数式エディタが立ち上がって編集可能になる。

文中に(インラインで)、たとえば下付文字など高さのあるフォントを入力すると、デフォルトのままだと行間が拡げられて間延びした仕上がりになってしまう。その場合は行間を固定にするなど,手当が必要になるので、手間を考えると、最初に説明した「新しい」数式エディタの利用を勧める。